2010年11月28日日曜日

Vertical or Horizontal

これまで、“書きだす”ということについて私見を述べてきた。筆者も“書きだし”を日々実践しているが、その際、最初のメモ、ノート等へのアナログ的“書きだし”には、縦書きを用いている。英数字やそれらを基本とするパソコン使用が多い環境にいながらも、縦書きにより、右から左へと筆を走らせている。現在、先のパソコンをはじめ、ほとんどの新聞雑誌等のテキストメディア情報や書籍類のほとんどは横書きである。具体的な数値は調べていないが、個人の体感では、縦書きに日常触れる機会は1割にも満たないのではないであろうか。また、<ヒト>の視野角において、「情報受容能力に優れる有効視野は水平に30度、垂直に20度程度に過ぎず、注視点が迅速に安定して見える安定注視野は水平に60~90度、垂直に45度~70度程度である」という大阪大学の研究報告がある。さらに、同大大学院の交通安全性に関する有効視野の研究では、「広い有効視野が確保されていることは、情報の検出効率と注視移動効率という2点から情報獲得の際に重要となるのである」と報告している。

こうした点から、<ヒト>は“書きだす”と同時に、その“書きだされたもの”を瞬時に情報として再獲得し、その繰り返しによって、不可視的な思考を“それ”として認識しているという一面があるとするならば、安定注視野にしろ、有効視野にしろ、より広い視野角の方が効率的であり、疲労軽減の点からも望ましいと考えるのが一般的であると言えよう。その意味で、横書きが氾濫する現状からすれば、それにならって横書きによる“書きだし”が自然ともとれる。それでもなお、筆者はあえて縦書きの“書きだし”を実践している。

まず、画数が多く、上下の動きが多い日本語は、縦書きが書き易いと個人的に感じている。次に、職業柄、横書きのアルファベットを書く時間も相当量であるため、縦書きにすることで、その違いが明確になり、より強い(視覚的な)刺激となって(文字情報を)獲得できていると感じている。そして、単純で、最初の理由とも関連するが、縦書きの右→左方向への書きだしはleftyである筆者には都合が良いのである。横書きの左→右の押し出すような書きだしだと、文字を手で汚してしまいがちである。それを避けるために、手を丸めるようにすると、文字自体がいびつなものになってしまう。きわめて個人的で些細な理由をならべたが、特に2番目は大切にしたいと考えている。汎用性を考慮するのであれば、定形のパソコン入力への移行がスムーズな横書きの書きだしが良いであろう。しかし、筆者にとって、いずれ汎用性のために定形化が求められるようなことがあったとしても、最初の、それこそ取り留めのない思考(の一端)を“書きだす”ということには、自然で、それを書きだした時の時間、環境、感情などの“雰囲気”が付随される不定形な手書きの縦書き文字が望ましい。

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