先日日本語の「・・・屋」について、職業差別の観点から不適切ではないかとの指摘を受けた。
実際、NHKをはじめとする放送業界では禁止用語の1つに挙げられているそうだ。
こうした職業差別表現の問題は、これまでもあった。例えば、看護婦→看護師、スチュワーデス
→キャビン[フライト]アテンダントまたは客室乗務員、ウェイトレス→スタッフなど、特に性差に関わるものが目立つ。アメリカでは、ポリティカリーコレクト(ネス)[politically correct(ness)]として、政治的公正の見地から、メディア上の表現などを是正する動きがある。
今回の「・・・屋」であるが、個人的には文脈[コンテクスト]に依存するのではないかという印象をもっている。例えば、声を荒げて、「・・・屋のくせに」、「・・・屋のぶんざいで」、「・・・屋が何を言っているんだ」等であれば、その文脈から侮蔑の念が容易に推察される。一方、「この・・・屋さんのは、おいしいね」、「あそこの・・・屋さんに頼めば大丈夫だよ」、「・・・屋さんはいつも新鮮ね」等となれば、そこに悪意は
見当たらない。 むしろ、“政治的に妥当な表現”より親しみさえ覚える。
職業差別の禁止という点から、禁止用語(になりうる表現)を一律使用制限してしまうのは、日本語表現の豊かさを枯渇させてしまわないだろうか。今後の検討課題としよう。