2009年11月18日水曜日

flawless

今日Michael Jacksonの公開限定映画"This is it"に関する記事の話をした。その中で、彼に対する評価にflawlessというのがあった。そもそもflawとはdefectやfaultと同義であり、それらがないことがflawlessにあたる。つまり、彼のパフォーマンスは「欠陥や傷ひとつない」、「非の打ちどころがない」という意である。この場合、perfectではなく、flawlessを用いることで、彼の音楽に対する感性のすばらしさ、完璧なまでの姿勢等を強調する意図を示そうとしたのであろう。科学のように完全な姿、形がない音楽界において、このような賞賛を受けることはきわめて稀有であろう。

なお、映画のタイトル"This is it"の意味も気になるところだ。一般に、itは漠然と話題の対象を指し、「これがそうである」、「まさにこれである」等で理解されていると思う。当初彼が記者会見の場でこの表現を使った際には、「これで終わりだ」(ロンドンでの公演を集大成にして、音楽活動を最後にする、ということ)の意味でとらえられていたようだが、映画のタイトルでは、「さあ、これからだ」(これが私のパフォーマンスだ、さあ、どうだ、ということ)のようなニュアンスになっていた。itが漠然としたことを指す限り、彼本人しかその真意はわからないのであろう。

ちなみに買い物などをして、ほかに買うものがないときにはレジで"That's it"「それで全部です」という。また、講義が終わる際にも、教員は"That's it for today"「今日の授業はこれでおしまいです」などという。この場合、前者であれば、買い物商品全体を、後者であれば講義内容全体をそれぞれ漠然と指してitを用いている。

2009年11月17日火曜日

ordered/organized

今日ゲストスピーカーとしてオーストラリアからいらしている方に英語で講義していただいた。2回目ともなるとオーストラリア独特のアクセントにも慣れ、イギリスやアメリカ英語のそれとは違った心地よさすら感じてきた。
前半はオーストラリアの紹介とご専門である化学についてお話いただき、後半は日本のimpressionについてコメントをいただいた。その中で、日本では常にsafeを感じ、安心して出歩くことができたという。最近物騒なニュースが続いている中で、少しほっとさせられるひとことであった。また、日本の社会はとてもorderedであり、organizedされているとのこと。これら2語が今回気になった表現である。この2つの語に共通するのはcarefully plannedであるということだ。つまり、注意深く、慎重に計画もしくは練られた、ということである。確かに、都内の道路の状況や駅前などの様子を見ていると、英米語圏、とりわけアメリカなどの大都市と比較しても多数の人々がきちんと考えられた情報を共有し、それを実行しているようだ。もっともそうした情報の共有と実践をともなわない社会性の欠ける人もいるようだが・・・
オーストラリアからの客人が帰国までにそうした場面に遭遇しないことを願うばかりだ。

2009年11月14日土曜日

vitamin

vitaminは人間にとって必須栄養素の1つである。英語学習という点からすると、しばしば発音の問題が取り上げられる。カタカナ表記では「ビタミン」だが、英語では/vaitamin/が一般的になっている。これはイオンとion、アルカリとalkali等と同じ類のものである。もっとも、これらの点は注意すればよいことであるので、さほど大きな問題ではない。今回発音の確認のつもりで辞書でチェックした際気づいたことがあった。vitaminの語源は、生化学者であったCasimir Funk (1884-1967)による造語であるが、それは当時vitaminの成分にamino acid(s)が含まれていると考えられていたため、"vita (vital=life) + amine (amino acid)"、つまり生命に不可欠なアミノ酸という意でvitaminとしたようだ。また、もともとはvitamineという表記であったようだ。

今回もそうであるが、辞書利用は思いがけない副次的情報が得られる機会であることをあらためて感じた。

2009年11月12日木曜日

hesitate

現在本務校にオーストラリアからの客員講師の方がきておられる。ありがたいことに、いくつかの講義をもっていただくことになり、私の担当クラスにもきていただた。これまでもそうであったが、やはり英語教育を重視する国策をとっているとしても、実際の英語のnative speakerの前では多くの日本人学生が受動的になってしまう。もちろん、単語力、文法力、リスニング力等を含む総合的な英語力の不足によるところが大きいが、“日本(語)文化の風土”もその一因となっているような気がする。よほど帰国子女でもない限り、自主的に手をあげてコミュニケーションを積極的にとろうとする学生はほとんどいない。それも“日本(語)文化”的に考えれば、周囲との同調や調和を考え、目立とうとすることをよしとしない風土の影響なのかもしれない。また、“恥じ”の文化からなのか、間違いをおかすことで、恥じを感じることを避ける傾向も年々強くなっているように思う。

"Don't hesitate to speak out. Don't be afraid of making mistakes"
「遠慮せずにはっきりと(自分の意見を)言おう。ミスを恐れるな。」

私が留学時代にアメリカ人指導教官からよく言われた表現である。まさにいま私が学生たちに伝えたいことでもある。

ちなみにhesitateとは、「ためらう、ちゅうちょする」という意であるが、否定文の場合、日本語文化的要素を加味し、「遠慮するな」とすることで、「態度を控えめにするな」の含みをもたせるとよい。つまり、「遠慮」の語源である「遠い将来を熟慮し、安易に目先の行動をとるな」の意味からも、制約にとらわれることなく、言葉にしよう、態度で表そうということであれば、"don't hesitate to~"がよいであろう。
なお、「(遠慮せずに)自由に~してください」であれば、"help yourself"等の表現もある。

参考「スーパーアンカー和英辞典」第2版 p188

2009年11月6日金曜日

sublime

 多くの方がご覧になったかと思うが、アメリカ大リーグのワールドシリーズ(優勝決定戦)において、松井秀喜選手の大活躍でNew York Yankeesがワールドチャンピオンに輝いた。外国で、しかもあのような大舞台で力を最大限に発揮し、しかもMVP(最優秀選手)にまで選ばれたことは、日本人として誇らしいことだ。日本での報道は予想通り各紙とも賞賛の嵐だったが、現地での評価が気になっていくつかのインターネットサイトをチェックしてみた。日本同様、現地でも松井選手の大活躍を賛美し、関連記事や写真が大きく取り上げられていた。伝統紙あるNew York Times紙までもが一面に松井選手のホームランの瞬間の写真を掲載していたのは驚きであった。
 数々の記事の中で、気になったのが次の一文である。
"On this November night, Matsui delivered a sublime performance at the plate that must have made Mr. October proud."( by Mike Fitzpatrick, the Associated Press)
特にsublime performanceが目にとまった。一般にはperformanceはgreatやbeautifulなどと結びつきが多いが、あえて今回の松井選手の活躍をsublimeとしたことは興味深い。sublimeとは、単に(表面上)すばらしいとか、すてきであるとかという意味ではなく、それを感じる者の心の内深くに響くようなすばらしさや見事な様をもつ事象に対して用いられるようだ。その意味で、今回の松井選手の活躍がYankeesファン、地元市民、そして日本人の心の内までも揺り動かしたことは、まさにsublimeなものであったと言えるであろう。

2009年11月4日水曜日

swine

swineとは豚のことである。なぜこの語に触れるかというと、今日swine flu(豚インフルエンザ)をとりあげたからである。一般には、豚を指す表現としてpig(英)とhog(米)がよく知られており、swineは古めかしい表現のようだ。swineと他の語の違いは、集合的表現であるということのほかに、言語文化的にマイナスのイメージを想起させる表現であるということだ。実際swineには「いやなヤツ」という意味がある。だからこそ、現在世界中に蔓延している豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)に対してもこの語をあてた理由の1つであろう。

ちなみに、New American Standard Bibleでは、Matthew 7:6において、"and do not throw your pearls before swine"とswineを用いて訳されている。これはご存じのとおり、日本の「猫の小判」にほぼ相当する「豚に真珠」、つまり、どれだけ貴重なものであっても、その価値が理解できないものには、意味がない、という教えである。

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