■確か、以前にも触れたと思うが、茶道では、釜の煮え湯のことを「松風(しょうふう)」という。しばしば、音も「ごちそう」という言い方をするが、侘びた茶室での、静寂した雰囲気の中でゆっくりと広がる松風は、まさにごちそうだ。
京都には、同名(読みは異なる)の伝統菓子がある。西本願寺むかいにある創業応永二十八年の亀屋陸奥の代表銘菓がそれだ。小麦粉に砂糖、麦芽、白味噌を練り込み、香ばしく焼き上げた松風(まつかぜ)は、どこか懐かしさを感じさせる味わいで、ほっとさせられる。お抹茶との相性も抜群で、気持ちを落ち着かせたいときなどには欠かせない一品となろう。
奇をてらうような菓子ではないが、確かに他では真似のできない真[心]なるものがある。京都には、こうした菓子が多い。■
京都亀屋陸奥「松風」