2014年5月18日日曜日
茶の湯のことば―貴人清次
■茶の湯の点前の1つに、貴人清次[きにんきよつぐ]というのがある。貴人とは、「高位な(官職にある)人」ということである。実際には、皇族、貴族、有力大名のほか、高僧等が含まれていたものと考えられる。清とは、前の貴人と同義であり、次とは、貴人の御伴のことである。つまり、貴人とその御伴の方にも茶を差し上げる点前である。
興味深いことに、貴人には、通例(比較的)安価な白焼きの茶碗を白木の貴人台に乗せて茶を出すことになる。
これは、高貴な方には、たとえ高価であっても、他人と使いまわす茶碗で茶を出すことはしない、つまり、使い捨て、と言う意味で、白焼き茶碗と白木の台を使用し、終了後、割って捨てることになる。したがって、不思議なことではあるが、御伴の方用の茶碗が高価であるということがおこりうるのだ。また、裏千家茶道では、貴人用茶筅は白竹であるが、お次[御伴]用の茶筅は煤竹である。したがって、貴人清次の点前所作では、貴人用とお次用で異なる箇所があり、その1つとして茶筅の使い分けがあるのだが、その使い分けをうっかりして忘れると、使い終わった貴人用でお次の茶を点てるといった無礼をおこなってしまうことがあるのだ。そのような時は「お手打ちだ」と揶揄するのである。(筆者が戦国時代の茶人であったのであれば、命がいくつあっても足りないくらいであったことであろう・・・)■
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