2013年5月22日水曜日
茶の湯のことば―棹物(さおもの)
■茶の湯にはお菓子は欠かせない。通例薄茶には金平糖のような掛け物や落雁などの打ち物菓子を干菓子として、濃茶には蒸し物、練り物、流し物などの(半)生菓子を主菓子として出す。その主菓子の中で、棹状(細長い棒状)の菓子類を「棹物」と呼ぶことがある。一般的には「棹物」と言えば、羊羹のことである。有名な小城羊羹のサイトによれば、羊羹はその字のごとく、「羊(の肉)」入り「スープ[汁物]」*が中国から日本に持ち込まれた際に、具[肉類]を小豆や練り粉で見立てたのがその始まりとされている。その後、汁気が取り除かれるようになり、現代の羊羹になったということである。元々、舟と呼ばれた木箱で型をとりながら蒸し上げる製法であったため、舟には棹が付き物ということで羊羹のことを「棹物」と呼ぶようになり、数え方も「一棹」(ひとさお)、「二棹」(ふたさお)と言うようになったそうだ。最近では、羊羹は1本、2本と数えることが日常的になってしまったようだ。(類似のことがスーパーやコンビニのレジにおける「箸」でも起きていることだが・・)もしかすると、羊羹を購入する際に、「ひとさお、いただけますか」などと言うと、お高くとまっているような響きを醸成してしまうのかもしれない。そうした表現は「とらや」や「源吉兆庵」のような“場所”を選んで用いるのが賢明であろう。■
*熱い汁物のことを羹(あつもの)と言い、まさに羊羹の「羹」の語源となっている。最近の学生はその意味を知らないかもしれないが、「羹に懲りて膾を吹く」の「羹」と同じである。
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