2013年5月21日火曜日

日英言語文化小論(12)【as American as apple pie】


■今日も蒸し暑かったが、3コマ(90分×3)を無事に終えた。梅雨の気配を感じるころとなり、学生の様子も心なしかどんよりしているようだった。授業中の活気がやや落ちてきているようだ。話題に変化をいれてみようと思う。
 ところで、今日のトピックはアメリカの伝統的食文化[食材]であるappleであった。"An apple a day"から"apple cider"や"Adam's apple"あたりを日英文化の違いに触れながら話を進めた。その中に、"as American as apple pie"*があり、「(アップルパイのように)いかにもアメリカらしい[的だ]」という意味を説明した上で、これをJapaneseに置き換えた場合の例も考えてみた。

as Japanese as sushi

が(食文化限定ということであれば)一番しっくりくると思われる。同様に、イギリスであれば、

as British as shepherd's pie**
as British as Fish and Chips

ということになろう。また、フランスであれば、

as French as vinaigrette***

であろうか。イタリアであれば、


as Italian as pizza

となろう。これらはいずれもGoogle検索(筆者はコロケーションの“アタリ”をつける際に仮想のコーパスとしてGoogleを見立てている)で相当数がヒットしている。各国の食文化における「~らしい食べ物」、つまり、典型的な[ステレオタイプ的な]食べ物を知る上で参考となるであろう。いずれも興味深いものである。
 こうした言葉のセット、いわゆるコロケーションから、共起する語を調査することで、その言葉が運用される集団や(地理的な)空間を取り巻く文化の一端を知る手がかりが得られるということは、本ブログでも触れてきているが、その一例が"as *** as ###"であろう。ある程度分析をする必要があれば、###の部分の事象を類型化する等の処理を行えばよいであろう。今回は食文化という括りとして捉えられる。あとは、***に入る語に、国、社会、集団等をあてはめることで、典型的[ステレオタイプ的]な事例を抽出することが可能となろう。こうした分析考察は、分析対象への他者からの視点を知る手がかりとなり、時に(安易な)偏見を回避する一助にもなるであろう。この点において、さらに内容を掘り下げ、分析を精査することで、(メディア)リテラシー研究としても扱うことが可能と言える。■


*apple pieは、アメリカの伝統的家庭料理であり、いわゆる母の味と言われるほど各家庭に独特の味付け[風味]があるそうだ。また、スライスしたりんごをきちんと並べていく様子から、「きちんとしていること」を"(in) apple-pie order"とも言う。


**shepherd's pieとは、マッシュドポテトのパイで牛ひき肉を包んで焼くミートパイで、イギリス伝統家庭料理の1つに挙げられる。もちろん、イギリス移民との関係からも、"as American as shepherd's pie"という表現も見かけるが、通例イギリス的なパイと捉えられている。

***vinaigretteとは、日本では通例フレンチドレッシングとして普及しているものを指す。





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