2010年2月3日水曜日

寿

日本では、郵便で相手方に返信を求める場合、自分の名前の下方に「行」と書く習慣がある。そして、相手方はその「行」を斜線などで消して、「様」を書いて出すのが通例だ。

お祝い事の場合、一般的な斜線ではなく、「寿」で消す[上から書く]ことがある。また、返信はがきの裏面に出欠の確認がある時は、「ご出席」の「ご」も「寿」で消すことがある。

もちろん、斜線でもかまわないであろう。いわゆる文字的なコミュニケーション上、全く問題はない。ただ、より丁寧、より祝福の気持ちを表すという意味では、「寿」を用いられていると、とても心美しい感じを受ける。そうした、単なる文字的な、そして言葉のやり取りだけではないのが、日本語文化の本質の1つなのかもしれない。言葉を大切にし、言葉を介して日々の平穏で、幸福な生活を願うという、日本語が世界に誇れる言語文化の一端であると思う。

ところで、「寿」とは、辞書的には、「言葉で祝うこと」、「長命」、「祝い事」などの意味がある。英語では、訳しにくいものの1つと言えるが、辞書的にみると、"felicitation"(お祝いの言葉を述べること)、"congratulation(s)"(祝いの言葉)、"happiness"(幸福)あたりであろうか。こうした表現は、状況に応じて使い分ける必要がある。なお、"congratulation(s)"は「努力して成し遂げたことに対する言葉」なので、結婚の場合、もともとは男性に対してかける言葉であったという。現在は男性女性ともに用いているようだ。(アンカーコズミカ英和辞典"congratulation"の項参照) これは、かつては結婚が男性側による努力の賜物であったということの表れであろう。日本の社会では、恋愛や結婚に積極的でない「草食系男子」という若者が“増殖”しているという。言葉の本質を知ると、彼らの結婚に"congratulations"と声をかけていいものかどうか考えてしまう。

現在メディアが盛んに用いている「婚活」の様子、とりわけ、「肉食系女子」の様子を見ていると、結婚する[までこぎつける]のは、それはまさに"Congratulations"であろう。この意味において、現代社会では、「寿」="Congratulations"と言えるのではなかろうか。。。

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